この記事では、弁理士試験の過去問の出題根拠となった判例と、実際の短答式筆記試験の問題を抜粋して紹介しています(研究という程ではないですが、頻出の判例です。)。
↑↑裁判所ホームページから、拾える範囲で判決全文のPDFファイルを拾って記事内に添付しているので、もし良ければ確認してみて下さい!
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事件の概要
本件は、原告において発明の名称を「無限摺動用ボールスプライン軸受」とする特許第九九九一三九号の特許権に基づき、被告に対し、被告製品の製造販売行為の差止め、被告製品の廃棄及び損害賠償を請求している事件である。
争点
- 被告製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か。
判決
第1審(東京地平成3年4月19日)
原告の請求棄却。
第2審(東京高平成6年2月3日)
原判決を取り消す。
※東京高裁では、出願時の技術水準によって置換可能性及び置換容易性が認められるとして、被告製品が特許発明の技術的範囲に属すると判示している。
最判平成10年2月24日←PDFファイル
原判決を破棄。
東京高等裁判所に差し戻す。
最高裁判決で定立した均等の成立要件は、
- 被告製品と異なる部分が特許発明の本質的な部分でないこと。
- 異なる部分への置換が可能であること。
- 被告製品の製造等の時点で、異なる部分への置換が容易であること。
- 被告製品が、特許出願時に公知ないし公知技術から容易でないこと。
- 出願過程で、被告製品が意識的に除外されていないこと。
上記5要件を検討するにあたって、
- 侵害時を基準とする成立要件。
- 出願時を基準とする成立要件。
- その他出願人の行為等に関連する成立要件。
の3つに分類して分析していく。
東京高裁判決と異なるのは、侵害時置換容易説を採用した点。
→出願人は、出願後にどのような技術が進歩するか予測できない。
↑↑特許権の保護範囲が拡大し、予見可能性を害するなどの問題もある。
→保護範囲が拡大することに配慮して、「異なる部分が本質的部分でないこと」を要件とした。
「特許発明の本質的部分」とは、「当該特許発明特有の課題解決手段を基礎付ける特徴的な部分」であり、これが置換できるのであれば全体として当該特許発明の技術的思想とは別個のものである。
【参考条文:特許法70条1項】
短答式試験問題抜粋
令和2年度【特許・実用新案11】
特許権侵害訴訟において、特許請求の範囲に記載された構成と対象製品の構成に異なる部分が存する場合であっても、その異なる部分が特許発明の本質的部分であるときは、対象製品の当該構成の異なる部分が特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、当該対象製品は、特許発明の技術的範囲に属すると解される。
→本枝は誤り。
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平成29年度【特許・実用新案5】
特許権者が、拒絶査定不服審判において、拒絶の理由を回避するために、特許請求の範囲を「成分Aを10〜30%の範囲で含有した」から「成分Aを10〜20%の範囲で含有した」に減縮する補正をした場合、成分Aを25%含有した製品については、特許権侵害訴訟において、当該製品の構成が当該特許の特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たることを理由に、当該製品が「特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属する」とは解されない余地がある。
→本枝は正しい。
本枝の場合、「拒絶の理由を回避するために、特許請求の範囲」を「減縮する補正」をしているので、特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものとして、均等論の5つ目の要件を満たさない。
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