今年も「劇場版名探偵コナン」の第26作目が4月より全国公開され、シリーズ初の興行収入100億円を突破したことが話題になりました。
記念すべき26作目は「黒鉄の魚影」。
第13作目「漆黒の追跡者」、第20作目「純黒の悪夢」に続き、黒の組織をメインテーマとしたシリーズの3作品目となります(タイトルに全て「黒」がふくまれているもの。)。
今作は、八丈島近海に建設されたインターポールの海洋施設「パシフィック・ブイ」を舞台に、黒の組織のボスからの命令でパシフィック・ブイに潜入した組織メンバーとコナンのヒリヒリするような追跡劇が見どころの一つです。
さらに灰原哀の過去と現在の切ない想いがこれまで以上に丁寧に描かれ、黒の組織(NOCも含めて)のメンバーがほぼ総出演、ストーリーも含めてとても厚みのある作品となっています。
物語のキーアイテムとなるAIの顔認証システム「老若認証」は、コナンの世界観ではものすごく都合の悪いシステムですよね…。
劇場版名探偵コナン第26作目「黒鉄の魚影」
どんな内容?
東京・八丈島近海に建設された、世界中の警察が持つ防犯カメラを繋ぐための海洋施設「パシフィック・ブイ」。
本格稼働に向けて、ヨーロッパの警察組織・ユーロポールが管轄するネットワークと接続するため、世界各国のエンジニアが集結。
そこでは顔認証システムを応用した、とある「新技術」のテストも進められていた。
一方、園子の招待で八丈島にホエールウォッチングに来ていたコナン達少年探偵団。
するとコナンのもとへ沖矢昴から、ユーロポールネットワークセンターに何者かが侵入し、目撃者のユーロポール職員がドイツでジンに殺害された、という一本の電話が。
侵入者はラムの側近、コードネーム・ピンガ。
↑ペンギンじゃないよ!
不穏に思ったコナンは、「パシフィック・ブイ」の警備に向かっていた黒田兵衛ら警視庁関係者が乗る警備艇に忍び込み、施設内に潜入。
するとシステム稼働に向け着々と準備が進められている施設内で、ひとりの女性エンジニア、直美・アルジェントが潜入した黒ずくめの組織の一員、ベルモットとバーボンに誘拐される事件が発生…!
さらに、彼女が持っていた、ある情報を記すUSBが組織の手に渡ってしまう…。
海中で不気味に唸るスクリュー音。
そして八丈島のホテルに宿泊していた灰原のもとにも、黒い影が忍び寄り…。
ピンガとウォッカによる灰原連れ去りからの蘭とピンガの格闘、新一(コナン)が蘭を逃がして車で追いかける一連の流れは劇場版ならではの緊迫した演出となっており、今作では蘭の活躍が見られないかも…、と思っていたのに嬉しい誤算でした。
全体として、一度では見切れないほどの濃い内容となっていたので、筆者も劇場に2回足を運んでしまい興行収入にバッチリ貢献できたと思います!
監督さん・脚本家さんはどんな人?
劇場版最新作「黒鉄の魚影」を監督した立川譲さんは、第22作目「ゼロの執行人」の監督も務めたアニメ監督で、今回脚本を務めた櫻井武晴さんとは劇場版で2度目のタッグを組んでいます。
世界中の警察が持つ防犯カメラを監視できるパシフィック・ブイが舞台となり、防犯カメラの情報とAIの顔認証による解析によってあらゆる場所の犯罪者を追跡できるシステムの開発者が拉致される、というSF要素の強い設定ですが、「相棒」シリーズでもありがちな設定ですよね。
脚本家の櫻井さんのフィールドでもあり、登場人物が多くてもストーリーを整理しやすい構成だったと思いました。
20年以上コナンを追いかけてきてきた筆者として、今作のお気に入りシーンといえば、、
原作での哀と少年探偵団とのやり取りで「アメリカにいたとき、東洋系のこの顔でいじめられてきた」という、当時はサラッと触れられたエピソードについて、直美視点の記憶から直美と哀の思い出に繋がり、システム開発のきっかけにもなっていたのには、グッとくるものがありました。
皮肉にも命を狙われることになってしまいますが、お互いにファーストネームを呼び捨てできる存在に再会できて心が通じ合った瞬間、目から水が…。
あとコミカルなシーンとして、ウォッカとキールのやり取りは、緊迫した状況が続く中でもホッとできる時間でしたね(直後のジンとのやり取りはキリキリと胃が痛むような感じだったので、この落差も良きです。)。
キールはCIAの立場上難しい立ち回りを要求されますが、上手くウォッカを手のひらで転がして情報を引き出すのは痛快極まりないです(ベルモットも似た感じですが、そもそも会話が少ないですよね。)。
ウォッカは原作第1話からどこか抜けているキャラクター、かつ、突出した能力もなさそうに見えるのですが、ジンの右腕のようなポジションに収まり続けていて非常に違和感があります(どんな伏線回収が見られるのが、今後が楽しみです。)。
あと、今回ベルモットは老若認証システムについて「玉手箱(ブラックボックス)」という表現を使っていましたが、哀はこれまでの原作で組織について「パンドラの匣」という表現を多用している印象を受けます。
脚本家の方々の、適格で皮肉の効いた言葉選びのセンスに脱帽しました。
声優さん・テーマソングは?
今作はパシフィック・ブイのエンジニアが多く、全てメジャーな声優さんで揃えていた印象でした。
- 種崎敦美さん
- 諏訪部順一さん
- 村瀬歩さん
- 神谷浩史さん
パンフレットを事前に購入していたのと、序盤の伏線(とある動作について。)から犯人はすぐに予想できましたが、「声優さんって、改めてすごい!」と思わせるような声の演技で、満足度も高いです。
筆者は、「夜は猫といっしょ」のピーちゃんを演じている種崎敦美さんが最近の一押しですが、村瀬歩さんの声の幅広さにも度肝を抜かれました。
今回の劇場版の楽曲にはスピッツの「美しい鰭」が使われています。
軽快だけれど優しげで、切ない恋物語のようなイメージですが、サビでは「流れるまんま流されたら 抗おうか美しい鰭で 壊れる夜もあったけれど 自分でいられるように」となっていて、絶対ブレない自分の意思が見え隠れしているんですよね。
映画でも、最後のキスシーン×2(!)からは切ない恋と同時に魔性の女を見たような気もしなくもない…。
何度かリピートしていると、灰原哀の想いに寄り添った曲であると同時に、直美・アルジェントにも通じるような楽曲だとも思えてきます。
劇場で鑑賞するまでは、スピッツと名探偵コナンの世界観が合うか少し不安でしたが、そんな心配を吹き飛ばすほどマッチしていてエンディングでまた目から水が出てきたのでした…。
まとめ
今作は海上や潜水艦の描写がメインだったからか、海のグラフィックがとても綺麗で(島の自然な描写も素敵でした。)、背景だけが実写のような奇妙な感覚に陥りました。
オープニングもほぼ全てシルエットにしていたり(セリフ同じでしたが。)、スタイリッシュで大人っぽい印象です。
次回作は怪盗キッドと関西組が活躍かな?
これだけ長寿連載となってもマンネリとしないのは、制作に携わる方々の努力あってこそですよね。
来年まで期待して待ちたいと思います。
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