この記事では、弁理士試験の過去問の出題根拠となった判例と、実際の短答式筆記試験の問題を抜粋して紹介しています(研究という程ではないですが、頻出の判例です。)。
↑↑裁判所ホームページから、拾える範囲で判決全文のPDFファイルを拾って記事内に添付しているので、もし良ければ確認してみて下さい!
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事件の概要
ドイツ連邦共和国において上告人(BBS社)により製造販売された製品(自動車用アルミホイール)について、上告人が、我が国において有する特許権(発明の名称「自動車の車輪」)に基づき、いわゆる並行輸入によりこれを輸入して我が国において販売している被上告人らに対し、輸入、販売等の差止め及び損害賠償を求める訴訟。
主張の理由
- 本件各製品についての本件特許権は、上告人がドイツ連邦共和国において本件各製品を適法に拡布したことにより、その効力を失ったから、被上告人らの本件各製品の我が国への輸入及び我が国における販売行為は本件特許権の侵害に当たらない旨の、いわゆる特許権の国際的消尽の主張をしている。
- 本件各製品は、いずれも本件特許権を有する上告人自身がドイツ連邦共和国において販売したものであり、上告人が本件各製品の販売に際して、販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意したことについても、そのことを本件各製品に明示したことについても、上告人による主張立証はされていない。
判決
上告棄却。
一般に譲渡においては、譲渡人は目的物について有するすべての権利を譲受人に移転し、譲受人は譲渡人が有していたすべての権利を取得するものであり、仮に、特許製品について譲渡等を行う都度特許権者の許諾を要するということになれば、市場における商品の自由な流通が阻害され、特許製品の円滑な流通が妨げられて、かえって特許権者自身の利益を害する結果を来し、ひいては「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する」という特許法の目的にも反する。
特許権者は特許製品の譲渡に当たり、特許発明の公開の対価を含めた譲渡代金を取得し、実施を許諾するに当たり実施料を取得するのであるから、特許権者が流通過程において二重に利益を得ることを認める必要性は存在しない。
しかし、我が国の特許権者が、我が国において有する特許権と譲渡地の所在する国において有する対応特許権とは別個の権利であることに照らせば、特許権者が対応特許権に係る製品につき我が国において特許権に基づく権利を行使したとしても、直ちに二重の利益を得たものということはできない。
短答式試験問題抜粋
令和4年度【特許・実用新案17】
日本国において、ある発明に係る特許権イを有する特許権者甲が、X国において当該特許発明に係る製品Aを製造し、他人である乙に対し、製品Aについて販売地ないし使用地域から日本国を除外する旨の合意なくX国において譲渡した場合には、その特許権者甲がX国においても特許権ロを有しており、また、その特許権者甲が有する特許権イ及びロに係る特許発明に実質的に差異がないと評価されるときに限り、乙は、製品Aを日本国に輸入することについて、特許権者甲から日本国で特許権イの行使を受けることはない。
→本枝は誤り。
我が国の特許権者又はこれと同視し得る者が国外において特許製品を譲渡した場合においては、特許権者は、譲受人に対しては、当該製品について販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を譲受人との間で合意した場合を除き、譲受人から特許製品を譲り受けた第三者及びその後の転得者に対しては、譲受人との間で右の旨を合意した上特許製品にこれを明確に表示した場合を除いて、当該製品について我が国において特許権を行使することは許されない。
国際的な商品流通の自由が最大限尊重されるべきである。
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