【特許法判例研究】マキサカルシトール製法事件(弁理士試験対策)

この記事では、弁理士試験の過去問の出題根拠となった判例と、実際の短答式筆記試験の問題を抜粋して紹介しています(研究という程ではないですが、頻出の判例です。)。


↑↑裁判所ホームページから、拾える範囲で判決全文のPDFファイルを拾って記事内に添付しているので、もし良ければ確認してみて下さい!

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事件の概要


発明の名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする特許権の共有者である被上告人は、上告人らの輸入販売等に係る医薬品の製造方法は上記特許に係る特許請求の範囲に記載された構成と均等なものであり、その特許発明の技術的範囲に属すると主張して、上告人らに対し、当該医薬品の輸入販売等の差止め及びその廃棄を求める事案。

本件発明と上告人らの製造方法
  • 被上告人は、本件発明の特許出願時に本件特許請求の範囲において、目的化合物を製造するための出発物質等としてシス体のビタミンD構造のものを記載していたが、その幾何異性体であるトランス体のビタミンD構造のものは記載していなかった
  • 上告人は角化症治療薬であるマキサカルシトール原薬の輸入販売をしており、本件特許請求の範囲に記載された構成と上告人の製造方法を比較すると、目的化合物を製造するための出発物質等がトランス体のビタミンD構造のものである点で相違する。
  • 上告人らは、被上告人において、本件特許出願時に本件特許請求の範囲に記載された構成中の上告人らの製造方法と異なる上記の部分につき、上告人らの製造方法に係る構成を容易に想到することができたと主張している。

判決





上告棄却。

原審→均等論の第5要件「対象製品等が特許発明の特許出願手続において、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情」が存するとはいえず、上告人らの製造方法は本件特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、本件発明の技術的範囲に属するとした。

最高裁→均等侵害を認める。
出願人が特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき、対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において、客観的、外形的にみて、対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには、対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである。 

【参考条文:特許法70条1項】

短答式試験問題抜粋


令和4年度【特許・実用新案12】

出願人である特許権者が、その特許出願時に、特許請求の範囲に記載された構成中の被疑侵害品(以下「対象製品」という。)と異なる部分につき、対象製品に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、これを特許請求の範囲に記載しなかった場合には、当然に、対象製品が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するから、対象製品は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するとは解されない。

→本枝は誤り(対象製品に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず、特許請求の範囲に記載しなかったとしても、それだけでは特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえない。)。


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