【商標法判例研究】小僧寿し事件(弁理士試験対策)

この記事では、弁理士試験の過去問の出題根拠となった判例と、実際の短答式筆記試験の問題を抜粋して紹介しています(研究という程ではないですが、頻出の判例です。)。


↑↑裁判所ホームページから、拾える範囲で判決全文のPDFファイルを拾って記事内に添付しているので、もし良ければ確認してみて下さい!

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事件の概要


上告人は、自身の有する登録商標「小僧」に基づき、被上告人(株式会社小僧寿し本部との間でフランチャイズ契約を締結して、その加盟店となっている株式会社(持ち帰り品としてのすしの製造販売。)。)が被上告人標章の使用により被った損害の賠償を求めた。

※被上告人の使用する標章は、「小僧寿し(自他商品識別機能を有する部分は「小僧」で、外観が類似。)」「KOZO SUSHI(自他商品識別機能を有する部分は「KOZO」)」など、いずれも称呼、観念は同一のため、本件商標と類似しているが、遅くとも昭和53年には「小僧寿し」は小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンの略称として著名になっており、商標法26条1項1号にいう自己の名称の著名な略称に該当する(被上告人標章については、一般需要者が「小僧寿し」を見聞きしたとき本件商品の製造販売業者としての小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンを直ちに想起するというべき。)。
さらに「小僧寿し」は、一般需要者によって一連のものとして称呼されるのが通常であり、各標章は企業グループとしての小僧寿しチェーン又はその製造販売に係る本件商品を観念させるものとなっていたと解する。



論点
  • 商標法38条2項に基づく損害賠償請求が認められるかどうか。

判決





上告棄却。

商標権は、文字や図形を組み合わせた商標そのものに財産的価値があるのではなく、業務上の信用が付着することによって初めて財産的価値を取得するものである。
一般需要者の間で「小僧寿し」の標章は本件商品の出所たる小僧寿し本部又は小僧寿しチェーンを表示するものとして広く認識され、相当大きな顧客吸引力を有していたのに対して、本件商標は知名度がなく、顧客吸引力を殆ど有しなかった

商標権38条2項は、商標権者は、故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる旨を規定している。
⇨商標権者は損害の発生について主張立証する必要はなく、権利侵害の事実と通常受けるべき金銭の額を主張立証すれば足りるものであるが、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証して、損害賠償の責めを免れることができるものと解するのが相当である。

当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが第三者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての実施料相当額の損害も生じていないというべき(商標権は、商標の出所識別機能を通じて商標権者の業務上の信用を保護するとともに、商品の流通秩序を維持することにより一般需要者の保護を図ることにその本質があり、特許権や実用新案権等のようにそれ自体が財産的価値を有するものではない。)。

短答式試験問題抜粋


令和4年度【商標6】

商標権侵害訴訟において、登録商標に類似する標章を被告がその製造販売する商品につき商標として使用したが、当該登録商標に顧客吸引力が全く認められず、登録商標に類似する標章を使用することが被告の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかなときは、得べかりし利益としての使用料相当額の損害が生じないと判断される場合がある。

→本枝は正しい。

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平成29年度【商標6】

商標権者は、故意又は過失により自己の商標権を侵害した者に対し、その登録商標の使用に対し通常受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を賠償請求する場合、損害の発生について主張立証する必要はなく、権利侵害の事実と通常受けるべき金銭の額を主張立証すれば足りる。
それに対し、侵害者は、損害の発生があり得ないことを抗弁として主張立証しそれが認められれば、損害賠償の責めを免れることができる。

→本枝は正しい。

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平成30年度【商標8】

フランチャイズ契約により結合し、全体として組織化された企業グループ(フランチャイズチェーン)の名称である「○○○チェーン」は、当該企業グループに属する企業「△△△株式会社」にとって、商標法第26条第1項第1号の「自己の名称」に該当する。

→本枝は正しい。

フランチャイズ契約により結合した企業グループは共通の目的の下に一体として経済活動を行うものであるから、右のような企業グループに属することの表示は、主体の同一性を認識させる機能を有するものというべきである。

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