この記事では、弁理士試験の過去問の出題根拠となった判例と、実際の短答式筆記試験の問題を抜粋して紹介しています(研究という程ではないですが、頻出の判例です。)。
↑↑裁判所ホームページから、拾える範囲で判決全文のPDFファイルを拾って記事内に添付しているので、もし良ければ確認してみて下さい!
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事件の概要
本件本訴(平成24年12月)は、米国法人であるAとの間で同社の製造する電気瞬間湯沸器につき日本国内における独占的な販売代理店契約を締結し(平成6年11月1日)、「エマックス」、「EemaX」又は「Eemax」の文字を横書きして成る各商標を使用して本件湯沸器を販売している被上告人が、本件湯沸器を独自に輸入して日本国内で販売している上告人に対し、被上告人使用商標と同一の商標を使用する上告人の行為が不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争に該当するなどと主張して、その商標の使用の差止め及び損害賠償等を求める事案である。
本件反訴(平成25年12月)は、上告人が、被上告人に対し、各登録商標につき有する各商標権に基づき、各登録商標に類似する商標の使用の差止め等を求める事案である。
これに対し、被上告人は、各登録商標は商標法4条1項10号に定める商標登録を受けることができない商標に該当し、被上告人に対する各商標権に対する行為は許されないなどと主張して争っている(被上告人は特許庁に対し、平成26年6月26日、本件各登録商標が商標法4条1項10号に該当することを理由として、本件各登録商標に係る商標登録の無効審判を請求した。)。
上告人の登録商標
- 平成17年1月25日、「エマックス」の文字を標準文字で横書きして成る商標につき、指定商品を「家庭用電気瞬間湯沸器、その他の家庭用電熱用品類」とする商標登録出願をし、同年9月16日、商標権の設定登録がされた(平成17年登録商標)。
- 平成22年3月23日、指定商品を平成17年登録商標と同じくする商標登録出願をし、同年11月5日、商標権の設定登録がされた。
- 原審では、被上告人による本件湯沸器の販売に関する新聞報道、展示会への出展、広告宣伝費の支出及び販売実績等から、被上告人使用商標は、遅くとも平成15年秋頃までには、日本国内において被上告人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものと判断した。
判決
商標法47条1項は、商標登録が同法4条1項10号の規定に違反してされたときは、不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除き、商標権の設定登録の日から5年の除斥期間を経過した後はその商標登録についての無効審判を請求することができない旨を定めている。
一方、商標法4条1項10号が、商標登録の出願時において他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標につき商標登録を受けることができないものとしているのは、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品等の出所の混同の防止を図るとともに、当該商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして認識されている者の利益と商標登録出願人の利益との調整を図るものである。
登録商標が商標法4条1項10号に該当するものであるにもかかわらず同号の規定に違反して商標登録がされた場合に、当該登録商標と同一又は類似の商標につき自己の業務に係る商品等を表示するものとして当該商標登録の出願時において需要者の間に広く認識されている者に対してまでも、商標権者が当該登録商標に係る商標権の侵害を主張して商標の使用の差止め等を求めることは、特段の事情がない限り、商標法の法目的の一つである客観的に公正な競争秩序の維持を害するものとして、権利の濫用に当たり許されないものというべきである。
被上告人使用商標が、本件各登録商標に係る商標登録の出願時までに、日本国内の広範囲にわたって取引者等の間に知られるようになったとは直ちに言うことはできず、被上告人による本件湯沸器の具体的な販売状況等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すべきである。
短答式試験問題抜粋
令和4年度【商標6】
商標権侵害訴訟において、被告は、原告の商標権に係る登録商標が、当該商標権に係る商標登録の出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標に類似する商標であって、その他人の商標登録に係る指定商品又は指定役務について使用をする商標であるために、原告の商標登録が無効理由を有する場合であり、かつ当該無効を主張することが商標権侵害訴訟の審理を不当に遅延させることを目的とするものでない場合であっても、当該無効の抗弁を主張することが許されない場合がある。
→本枝は正しい。
除斥期間が経過したときは、商標法4条1項10号違反の無効理由を有する商標権の行使に対して当該無効理由に基づく無効の抗弁を主張することができない。
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